蒲田駅近くに松竹の映画撮影所跡があるらしいと聞きつけ、友人達と行ってみた。あまりにひっそりとした観光スポット(と呼んでいいのかわからないレベル)であったが、今回はその様子をまとめてみた。
松竹キネマ撮影所とは
松竹映画の撮影所といえば大船が有名だが、元々は蒲田に存在していたらしい。大正9年(1920年)から昭和11年(1936年)までの16年間、大船に移転するまでの間、蒲田の地で撮影をしていたとのことである。当時は俳優さんも多く住み、そのため、蒲田は非常に活気のある地域だったようである。
当時の撮影所の前には川が流れていたようで、撮影所の入り口に「松竹橋」という橋が掛けられたらしい。現在もこの橋が当時の跡地の象徴として残されているとのことである。なんだか面白そうなので、ぜひこれを見に行こう!となったわけである。
松竹橋が見つからない?
この松竹キネマ蒲田撮影所の跡地は、蒲田駅東口から徒歩3分の場所にある。(3分とは書いたが、ほんとに駅からすぐの場所だ)この跡地、現在は「アロマスクエア」という商業ビルと区民センター「アプリコ」が隣り合って建っている。蒲田と言う場所にありながら、とても整然としていて綺麗な建物であった。
ただ現地に着くのは一瞬だったのだが、ここからが厄介であった。この撮影所の跡地、なかなかに広く、肝心の橋が見つからないのである。そんな橋があるなら、現地に行きゃあすぐにわかるだろうと、ろくに下調べもせずに訪れたのがいけなかった。あっちへ行ったりこっちへ行ったり、探せど探せどさっぱり気配がない。
しかも当日は雨。迷子になればなるほど、ずぶ濡れになっていく。結局10分近く建物の辺りをうろちょろしたのだが見つからず、雨に耐えられなくなり、アプリコに避難した。
意外な場所にあった松竹橋
館内には幸いにも受付の方がいた。コミュ障なおっさん達がじゃんけんで尋ねる係を押しつけあった後、勇気を出して場所を聞いたところ、親切丁寧に教えてくださった。初めから素直に聞いておけばよかったのだが、衝撃の事実が発覚した。なんとこの橋跡、外にはなく、アプリコの中にあるのだ。ないはずである。あんなに雨の中をうろつき回ったのに、、
それがこれである。
アロマスクエアとアプリコは中でつながっているのだが、そこの接続口にしれっと設置されていた。(というか受付のすぐそばにあったのだが、あまりにもしれっとすぎて我々誰も気づかなかった。。)
確かに橋である。ただ思ってたのとだいぶ違うが。。。なんか水路があってその上にかかっているものを想像していたのだが、これは橋というより、石碑という感じではある。
しかも大田区のホームページをよくよく見ると
現在は跡地に区民ホール「アプリコ」が建っています。敷地内には昭和61年(1986年)に制作された映画『キネマの天地』で使用された松竹橋(蒲田撮影所前に架かっていた橋を再現したもの)が残されています。
出典:大田区ホームページ
ということである。
どうやらお目当ての松竹橋は完全に消滅している。この橋は当時の橋ですらなく、映画のセットで使われたものなのである。我々石碑の前で、大正時代から生き残ってきたという歴史の重みをしみじみと感じていたのだが、どうやら自分で勝手に重くしていただけのようだ。トホホ。。ちゃんと書いてあるにもかかわらず、説明を読んでない私が悪いのだが。
どうりで観光スポットとして、あまり聞いたことがないわけである。ちなみに、観光客は我々以外一人もいなかった。
感想
正直ちょっと拍子抜け感はあったが、それは観光スポットとして行くからであって、これはこれで十分に楽しい。この橋以外にもアプリコの地下には当時の撮影所のジオラマが展示されていて、細かな作りをじっと見ていられる。フラッと訪れる分には良い場所である。
ちなみにキネマ撮影所跡を訪れたお散歩動画を作ったので、興味のある方は見ていただけると嬉しいです。動画内では、橋を大正時代に建てられたものだと思い込んで最後まで話が進んでいる。勘違いで歴史の流れを感じている様が、全くお恥ずかしい限りである。
まとめ
今回は松竹キネマ蒲田撮影所跡地を訪れたので、まとめてみた。跡地とはいえ、大掛かりなセットの名残や観光スポット的要素を期待して行くとがっかりするが(あくまで区民センターである。)フラッと訪れる分には歴史の残り香を感じられる楽しいスポットである。蒲田にお立ち寄りの際にはぜひ。