高野秀行さんの「ミャンマーの柳生一族」を読めばミャンマー情勢がわかる?

ミャンマー情勢が不穏である。政治的なことを書くつもりはないのだが、市民の生活の自由が制限されていたり、死者が出るなど治安が不安定なようで心配だ。ミャンマーのニュースを見ていると頭に浮かぶのが、作家の高野秀行さんである。高野さんはミャンマーに関する本をいくつか書いているが、軍事政権が絡む話としては「ミャンマーの柳生一族」という本を出版している。今回は高野さんの「ミャンマーの柳生一族」という作品についてまとめてみた。

「ミャンマーの柳生一族」とは?

独特なタイトルだが、これは作家の高野秀行さんがミャンマーの国境地域へ取材に行った際の話をまとめた内容となっている。ルポを通してミャンマーの国の様子などを窺い知ることができる。

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そもそもどんな話?

これはミャンマーの少数民族が住むエリアを、高野さんが同じく作家の船戸与一さんのお供をしての取材旅行をまとめた話である。あくまでフランクな内容になっており、政治情勢などを主にしたものではないが、ミャンマーの軍事政権の関係者と行程を共にしながら取材をしていくため、政権側の人間の様子や、人々の政治に対する考え方、少数民族の問題など、ミャンマーが一体どんな国なのか、ということを文章から汲み取ることができる。

高野さんはミャンマーに関する本を何冊も出しており、現地の辺境地域で生活もされているため、ミャンマーの少数民族への人脈が広く、理解も深い。(何故か反政府軍の重要人物などとも面識があったりするから驚きである。)

そのため船戸さんが現地を舞台にした小説を書くためミャンマーを取材をするにあたって、辺境地域の情勢に詳しい高野さんにお声がかかり、連れて行かれたらしい。

巨匠、船戸与一さんとの旅

高野さんの本といえば、旅の中でいろいろなトラブルに巻き込まれたり、現地事情を独特の考察でわかりやすくかつ面白くまとめてくれるのがその特徴なのだが、このミャンマーでは船戸与一さんとの旅というのが、魅力をより倍増させている。

というのもこの船戸さんが、非常に豪快な人で、高野さんの旅のスタイルに非常にマッチしているのである。船戸さんは著名な作家さんであることはもちろん、高野さんとは所属していた早稲田大学探検部の先輩後輩という関係なようだ。船戸さんも世界を100カ国近く回っている経験があり、非常に肝が座っている方として描かれている。

そもそもミャンマーへは小説を書くための取材で来ているはずなのだが、船戸さんはどんな内容を書くのかを全く決めていないのである。「どんな小説かそんなもん決めちゃいねえよ。行けばなんとかなるだろう」というノリで乗り込んでしまっている。

入国もなかなかスムーズに行かなかったようで、国内で政治的な話はしないという暗黙の了解があったようなのだが、船戸さんはお構いなしなのだ。乗りつけたタクシーの運転手に、いきなりアウンサンスーチーは好きか?と聞いて、取材を始めてしまうのである。当時はまだ今より治安がよかったとはいえ、禁止されていることを意にも介さず、なかなか自由な人だ。

そんな人と高野さんがタックを組んで、辺境地に行くのだから、この旅は面白くならないはずがない。普通に暮らしてたらちょっと経験できない、ワイルドな旅がまとめられている。

ちなみにこの取材によって書かれたのが、船戸さんの「河畔に標なく」という作品である。興味のある方はぜひ読んでみることをお勧めする。

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ミャンマー情勢を江戸時代に例える高野流解説

高野さんの旅は基本的に現地に深く潜り込んで、現地のリアルな生活を体験する、というやり方である。ただこの旅行記ではいつもと違い、ミャンマーの軍事政権の人間と同行するという異色の旅である。軍部に監視されながらの取材のため、関わる人から本音を聞きづらかったり、本当に見たかったところが見れなかったりと色々と不自由があったはずだが、それでも高野さんらしさがしっかりと出ている作品となっている。

例えば、ミャンマーのわかりづらい政権事情や民族の勢力などを、日本の江戸時代の武将に喩えながら解説してくれている。この本のタイトル「ミャンマーの柳生一族」という名前も軍事政権の要人を江戸時代の剣豪で有名な柳生一族に例えながら、書いていることからついているのだ。

高野さんは別の本でも戦国武将に例えながら、辺境地の部族を説明するやり方をよくやるので、歴史が好きな人であれば、イメージしやすいだろう。聞き慣れないカタカナの部族名や要人の名前も、仙台の伊達家や加賀前田家などの名前で例えてくれるので、急に親近感がわく。結構センシティブでデリケートな話も多いと思うのだが、わかりやすさ、フランクさを忘れずに書いてくれているので、非常にとっつきやすいのだ。

まとめ

今回は高野秀行さんの「ミャンマーの柳生一族」という本についてまとめてみた。現地に入り込んで現地民とどっぷり浸かると言うよりは、国の特権を利用して、取材ツアーをしている感じなので、いつもの高野さんとはちょっと毛色が違うが、それでも読み物として高野節は健在である。ミャンマーという国を知りたいという方はぜひ、高野さんの本を読んでみることがお勧めである。

高野秀行氏の本
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